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ドイツデザイン事典ここでは現代ドイツのデザインに関する重要な項目を解説していきます。内容は随時追加。 持続可能性(Nachhaltigkeit、ナハハルティヒカイト)の定義現在のドイツのデザインを語る上で欠かせないのが、持続可能性(sustainability/サステナビリティ)というキーワードです。持続可能性は、分野を問わず現代デザインにおける最重要テーマの一つと言えるでしょう。 通説では、持続可能性という概念の起源は17世紀にまで遡ると言われています。フライブルクの役人であったHans Carl von Carlowitz(ハンス・カール・フォン・カーロヴィッツ)は、森林の伐採は一定の期間にその森林が自然に再生できる範囲で行われなければならないと提唱しました。これが持続可能性の『ありのままのシステムそのものが長期に渡って持続的に保持されること』という大原則を定め、その後の様々な理論や政策の下地となりました。 持続可能性の実現は政治、経済、そして環境・生態学分野では一つの理想とされてきましたが、その定義についてはそれぞれの分野で検討が重ねられてきました。現在、持続可能性の説明として最もよく用いられるのが、1987年、ブルントラント委員会(Brundtland Commission、またはWord Commission on Environment and Development=環境と開発に関する世界委員会)が公開したレポート、”Our Common Future”(所謂ブルントラント・レポート)から引用される一文、
です。ここでは、持続可能性は現在および未来の世代の両方のための一種の発展として描写されています。 経済学における持続可能性とは、
ことを意味します。また、持続可能な発展とは、他者からの投資や経済的な援助によってではなく、自らが生み出す利益によって自立的に達成されなければならないとしています。 環境学における持続可能性については、世界銀行で環境部門の経済学者だったHerman Dalyによって中心となる要素が説明されました。Dalyは以下のように要点をまとめています。 ・再生可能な資源の分解(利用)速度は資源の回復速度を上回ってはならない ここでは、資源の保護の是非だけではなく、人類と自然界双方の現実的な許容量に同時に着目しています。また、経済学における定義と違い、まず自然環境に主題を置いた定義であることも分かります。 このように、持続可能性とは様々な観点から解釈・説明され得る包括的な概念なのです。まとめるならば、持続可能性とは現代そして未来の世代がそれまでと同じか、より良い生活を手にいれるために必要最低限のものが慎重に消費され、また保護されるための環境的、社会的または経済的な取り組みと理解することが出来ます。しかしその取り組みが具体的にそれがどのような内容であるかは、個々のケースを見て判断されなければなりません。 参考 重要な機関Rat für Formgebung(ラート・フュア・フォルムゲーブング、またはGerman Design Council)ドイツのデザイン界の一つの柱となっているのが、Rat für Formegebung(以下RfF)の存在です。RfFの設立のきっかけは、1949年のニューヨークの輸出商品のトレードフェアでした。戦後ドイツの復興ぶりをアピールする最大のチャンスでしたが、ドイツが展示した品々は凄まじいほどの批判に晒されたのです。ドイツ連邦議会は翌年、ドイツ製品の質を高め、ドイツ工業の国際的競争力を磨くべく、Rat für Formentwicklung(ラート・フュア・フォルムエントヴィックルング)という独立した機関の設立を決定します。これが元になって1953年、『デザインを経済的また文化的ファクターとしてドイツ経済に組み込むことで、ドイツ経済に貢献する』という使命の元、財団法人Rat für Formgebungは発足しました。 以後RfFは60年以上に渡り、展示会、デザイン賞の主催、カンファレンス、関連書籍の出版または直接のアドバイスなどの活動を行っています。現在でこそドイツ製品はその先進性と品質で世界的な名声を獲得していますが、それはデザインを国家的プロジェクトと捉え支援してきた戦後ドイツの戦略があってのことなのです。 http://www.german-design-council.de/ ドイツの主なデザインアワードGerman Design Award iF Design Award Design Plus powered by Light+Building ICONIC AWARDS: Interior Innovation(2015年までInterior Innovation Award) Red Dot Design Award Designpreis der Bundesrepublik Deutschland(デザインプライス・デア・ブンデスレプブリーク・ドイチュランド、DBD) |